極彩色のクオーレ
振り向くと、茂みから中型の獣が飛び出してきた。
長く垂れた耳とフサフサの尻尾が目を引く、灰褐色の獣。
少年が仕留めた獣よりも、俊敏そうな体格をしている。
長い爪がギラリと光り、唇の隙間からは鋭い牙がちらりと見えた。
あれで引っ掛かれたり噛まれたりしたら只事では済まない。
「ガウガウッ!!」
獣は真っ直ぐに、少年に飛びかかろうとしている。
完全に獲物と見なした様子だ。
だが少年は慌てることも驚くことも焦ることもなく、すぐ傍の木に立てかけてあった武器を手にした。
それは鉄製の棍棒だった。
柄は握りやすい細さだが、殴打する部分は大人2人でも抱えきれないくらい太い。
その先端には、きれいに研がれた刃が付いている。
少年のすぐ目の前で、獣がガバッと口を開いた。
ズラリと並ぶ歯が露になったが、それでも彼の表情に変化はない。
「よーいしょっ」
少年は柄を両手で握り、バットのように棍棒を振った。