極彩色のクオーレ





振り向くと、茂みから中型の獣が飛び出してきた。


長く垂れた耳とフサフサの尻尾が目を引く、灰褐色の獣。


少年が仕留めた獣よりも、俊敏そうな体格をしている。


長い爪がギラリと光り、唇の隙間からは鋭い牙がちらりと見えた。


あれで引っ掛かれたり噛まれたりしたら只事では済まない。



「ガウガウッ!!」



獣は真っ直ぐに、少年に飛びかかろうとしている。


完全に獲物と見なした様子だ。


だが少年は慌てることも驚くことも焦ることもなく、すぐ傍の木に立てかけてあった武器を手にした。



それは鉄製の棍棒だった。


柄は握りやすい細さだが、殴打する部分は大人2人でも抱えきれないくらい太い。


その先端には、きれいに研がれた刃が付いている。


少年のすぐ目の前で、獣がガバッと口を開いた。


ズラリと並ぶ歯が露になったが、それでも彼の表情に変化はない。



「よーいしょっ」



少年は柄を両手で握り、バットのように棍棒を振った。




< 6 / 1,237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop