極彩色のクオーレ
「同胞探し、動ける間に達成できるといいな」
「難しいところだな。でも、そうなることを祈っている。
それが旅の目的の一つだからのう」
「そっか。頑張れよ、じーさん」
老人はパイプの灰を地面に落とし、ポケットにしまう。
青年も荷物を背負い直して、河川へつづく道へ踏み出した。
山へと歩きかけて、老人は青年に問いかける。
「ああ、お前さんはこれからどこへ向かうんだ?
そういえばまだ、きちんとそれを聞いていなかったな」
「どこだろうな~、そんな目的とか行きたい場所とかおれにはないし。
故郷も捨てたから戻るつもりもねえ。
でも、多分じーさんとは二度と会わないところかな」
「そうか……達者でな」
「そっちこそ、もう年なんだから無理するなよ」
「アホ、まだまだ若いものには負けるかい」
青年は振り返ることなく、ひらりと手を振って先へと進んでいく。
別れ際によく使う言葉「さようなら」や「また会おう」「元気でね」「忘れないで」……そういったものは口には出さなかった。
あまり珍しいことでもないので老人は気にしない。
「いやはや、本当に、長生きはするものだのう」
見えなくなった青年の背中へつぶやいて、老人も己の旅路へと戻った。