極彩色のクオーレ
赤色に照らされる三日月が山際に上がったところで、青年は河川に到着した。
広い岸にテントを張り、野宿の準備をする。
火を起こし、来る途中で仕留めた兎を捌き、熱した鉄板で焼く。
食事を終えた頃には、辺りはとっぷりと暮れていた。
片付けをして、青年は鞄から小さく折り畳まれた紙を取り出す。
それは数枚の設計図だった。
さっき出会った、狩猟家たちの話を思い出す。
「あの様子だと、あんまゴーレムだって気づかれてないようだな。
身近にいるやつならバレてても仕方ないと思ってたけど、さすがおれの造ったゴーレム」
満足げに頷いて、青年はそれをたき火に放り込んだ。
小さくなりかけていた橙の炎が絡み付き、紙を黒く燃やし、どんどん形を変えていく。
『目隠ししている刺繍屋の女の子と暮らしているんだってな』
男たちの中の誰かが言っていた言葉を思い出す。
その刺繍屋が、『彼』の新しい主なのだろう。
(あいつが選んだなら、おれよりずっといい性格の奴なんだろうな)
跡形もなくなった設計図から顔を逸らし、青年は寝転がって空を仰いだ。
星をまとった藍色の空。
街の中では、こんなにきれいには見えない。
「刺繍屋と一緒に、か……」
頭の後ろで手をくみ、青年は瞼を閉じてため息をついた。
ぼしゅ、とたき火が消え、夜の暗い青色が瞬く間に広がっていく。
もう一度目を開けて、さらに見えやすくなった空を睨んで青年は呟いた。