極彩色のクオーレ
十八番目の"心"
早朝の森、白い靄がふわりと木間を覆う時間帯。
薄暗く目を凝らさなければ周りの様子が見えないそこに、大型獣独特の低いうめき声が鳴る。
罠の網にかかり、さらに数本の矢が突き刺さっていた。
痛みのせいでぐったりしていた獣だったが、近づいてくる気配に目をぎょろりと動かす。
それはランプを持ち、武器や縄を手にした猟師たちだった。
「ガァアアアッ!!」
橙の光に照らし出され、彼らの臭いをかぎとった瞬間、牙を剥いて暴れ出す。
衰弱していたとは思えない強さだ。
近づこうとしていた数人の猟師が驚く。
「うおっ、びっくりした」
「まだ生きていたのかよ……」
「こ、こいつ、よく見たらキマイレナじゃねえか!
なんでエンハンスにいるんだよ!?」
「俺が知るか!」
「キマイレナって、確か凍星(こおりぼし)の中旬にシオードで仕留めたやつがいたんじゃないのか?
まだ他にもいたのかよ」
猟師たちが口々に思ったことを出す。
その間もキマイレナは暴れ続け、やがて罠の金具が一つ外れた。
*凍星……2月のこと。