極彩色のクオーレ
二人の声が遠ざかり、雑多な音に混ざって聞こえなくなった。
代わりにパタパタと忙しない足音が近づく。
優しく肩を叩かれた。
「はぁい、お待たせ。
ごめんなさいね、今日はいつもと同じ量にはしてあげられないのよ」
「あ、ありがとうございます」
確かに、受け取った紙袋はいつもより少し軽い。
値段を高くしたせいなのだろう。
今までこんなことはなかった、何かあったのだろうか。
さっきの主婦たちの話しも気になり、ティファニーは紙袋をしまいながら尋ねた。
「あの、どうかしたんですか?」
「ちょっとね、売り物の値段を高くしたのよ」
「野菜、あまり採れなかったんですか?」
「まあね、今年はどこの農家も不作なんだよ。
病気か何かだとは思うんだけど、はっきりした原因は分かっていないわ。
枯れたり、変色したり、育たなかったり……
だから周りの村や町で採れた物を譲ってもらうしかないんだよ」
「それで少し高くなっているんですね」
正確には少しではない。
ティファニーには見えていないが、値札の数字は、野菜にしてはけっこう高いものになっている。
いつもと同じ代金ではあまり買えないくらいだ。
気を遣わせたくなくて、女将はかなりおまけしたのである。