私の意地悪な旦那様
………何がよかった、なの?
ぎゅーぎゅーと私に抱きつきながらそう言ったっきり動かない功希に、どうすれば良いか一瞬戸惑う。
けれども、事態を把握した私の頭には段々と昨日の光景や帰ってこなかったという事実が思い出され、ふつふつと怒りが沸き起こってきたのだった。
「………離してよ」
「…………莉乃?」
今までの私だったらあり得ないような、冷たく色のない声で言えば、驚いたように腕をゆるめて顔を覗いてくる。
その顔を見た瞬間、ぶわっと胸の内から湧き上がってきた涙が止めどなく溢れだした。