私の意地悪な旦那様
「……普通あのタイミングだったら『好きです!付き合ってください!』とかっていうんじゃないの?」
にやにやしながら、私を壁越しに応援していてくれた潤の元へ行く。
一部始終を見ていた潤は、私の発言に対して不満があるようだった。
「あんな人気のない廊下で、先輩と2人っきりだなんて状況滅多にないんだから、言えるときに言った方が良かったんじゃないの?」
「だ、だって今の私が先輩と付き合うだなんてそんな大層なこと考えられなかったんだもん」
さすがに自分でも、後になって「話しかけさせてください」だなんて可笑しいなとは思ったけれども。
それを好きにすればって言ってくれたってことは、これから先先輩に話しかけて良いということに他ならなくて。
「今の私には、これが十分なんだ」
「……まぁ、莉乃が良いならいいか」
にこりと笑った私に、潤は諦めたように息を吐いた。