私の意地悪な旦那様
先輩は、私が壁を越えて先輩に飛び込んだのを覚えててくれてたんだ。
今までそんな話をしなかったからなおさらその事実は私の心を擽る。
気を抜いたらにやにやと気持ち悪いぐらい口元が緩くなりそうで、私は喋ることをやめて口元を引き締めることに意識を向けた。
そのため、当然沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、これまた珍しいことに先輩のほうだった。
「次の授業実験だから」
すくりと立ち上がった先輩は、そのままドアへと向かう。
「先輩っ、これ!」
隣に置いてあった先輩のお弁当箱に気づいた私は、それを手に取ると、慌てて先輩を追いかけた。