先輩×後輩*林さんの恋



 『最近ね、隣の病室の3歳の女の子と友達になったの!』



 凄く、楽しそうに教えてくれたんだ。
 

 『良かったじゃんっ!小さい子ってかわいいよねぇ』


 『うん!実はその子も同じで...あと3か月くらいしか生きられないらしくて。』


 一気に眞白の顔は暗くなったんだよね。


 『でもね、一緒に絵を描いてて...』


 小さい女の子と少し大きな中学生くらいの女の子と、赤ちゃんが描いてある紙を見せてくれた。


 『眞白、この赤ちゃんって誰?』


  小さい女の子は3歳の子。中学生くらいの子は眞白でしょ...?


 『私たちの、夢だよ』


  そう、眞白はつぶやいた。目にたくさんの涙を浮かべて。


 『私も、奈央(なお)ちゃんも同じ夢があった。それも病気がわかってからできた夢。叶わない...そうわかっているけど。ママになりたかったの....っ』


  奈央ちゃん..隣の病室の3歳の女の子の事だろう。

  そのころの私には、≪ママになりたい≫なんて、そこまで思っていなかった。

  
  大人になったら結婚して、子供ができて。それは、当たり前のように思っていたから。


  『私ね、まだ死にたくないの....。病気がわかってから、何度も神様をうらんで。こんなに生きたいと願う人に死を与えて。』



  死ぬのは怖い。眞白はそういっていた。当たり前だよ..死ぬのなんて想像がつかない世界だから。

  『だから、大好きな紗綾にお願いがあります。幸せになって...。大好きな人と結婚して、子供を産んで...幸せな生活を送ってください。』


  『眞白がいなくて....幸せになれるかな』

  『世界が違ったとしても、私の居場所は紗綾の心に残っている..きっと。だから、離れないよ。近くで、幸せを願っているからね。』


  この時は、泣きすぎて言葉が出なくて。

  このあと、どうなったのか..思い出せなかった。

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