10円玉、消えた
第六話 俺の道
やはり薫のカンは的中してしまった。
幸子と杉田はデキていたのだ。
竜太郎の位置からは、身を寄せ合っている二人の背中しか見えないが、もうそれだけで充分だった。
その場にいることに耐えられず、竜太郎は再び外へ出た。
それにしてもあのときの母の甘えた声、竜太郎がこれまで一度も聞いたことのないものだ。
その声を思い出すと気分が悪くなってくる。
竜太郎は自分が風邪をこじらせているのをすっかり忘れ、商店街を足早に歩くのだった。
無意識のうちに、竜太郎は『黒部サイクル』に来ていた。
入口付近で精気のない顔をして立っている竜太郎を見て、黒部が慌てて出てきた。
「どうした?リュウちゃん」
「あ…タカさん…」
その様子から、ただ事ではないとすぐわかる。
黒部を即座に竜太郎を中へ入れた。
いつも殆ど、自転車の並んでいる店内で話しをするのだが、今回は奥の小さな事務所で話すことにした。
椅子に座ると、竜太郎はゴホゴホと咳を漏らす。
「リュウちゃん、風邪か?」
「う、うん。だけど大丈夫。大したことないから」
「そうには見えないぜ。早く家に帰って寝た方がいいよ」
「そうだけど…いまはまだ帰りたくないんだ」
幸子と杉田はデキていたのだ。
竜太郎の位置からは、身を寄せ合っている二人の背中しか見えないが、もうそれだけで充分だった。
その場にいることに耐えられず、竜太郎は再び外へ出た。
それにしてもあのときの母の甘えた声、竜太郎がこれまで一度も聞いたことのないものだ。
その声を思い出すと気分が悪くなってくる。
竜太郎は自分が風邪をこじらせているのをすっかり忘れ、商店街を足早に歩くのだった。
無意識のうちに、竜太郎は『黒部サイクル』に来ていた。
入口付近で精気のない顔をして立っている竜太郎を見て、黒部が慌てて出てきた。
「どうした?リュウちゃん」
「あ…タカさん…」
その様子から、ただ事ではないとすぐわかる。
黒部を即座に竜太郎を中へ入れた。
いつも殆ど、自転車の並んでいる店内で話しをするのだが、今回は奥の小さな事務所で話すことにした。
椅子に座ると、竜太郎はゴホゴホと咳を漏らす。
「リュウちゃん、風邪か?」
「う、うん。だけど大丈夫。大したことないから」
「そうには見えないぜ。早く家に帰って寝た方がいいよ」
「そうだけど…いまはまだ帰りたくないんだ」