10円玉、消えた
竜太郎は、この際だから里美との思い出が残る物を片付けてしまおう、と考えた。
写真はもちろんのこと、彼女からプレゼントされた物や、二人で遊びに行ったときに買ってきた物など、とにかく全てだ。

そのため作業は夜までかかった。
こんなことで休暇の一日分を費やすハメになろうとは、と竜太郎の気持ちは無念さでいっぱいである。

作業を終え、竜太郎は疲れてカーペットの上にデーンと横たわる。
気分はすっきりしたわけではなく、逆に寂しさが一層募った。

だがこれも、里美とのケリをつけるための一つのケジメなんだ、と自分に言い聞かせた。
彼女のことをいつまでも未練がましく思っていても何もなりはしないのだ。



休暇二日目、竜太郎はパチンコ屋や本屋へ行ったりして、近場をブラブラした。
さすがに連休中はいつもより人が少ない。
それでも自分と同じような、暇を持て余した単独行動の中年男が多くいて、竜太郎はなんだかホッとした気分であった。

やがてレンタル店でDVDを5枚借り、そのうち2枚を観た。
どちらも気楽に観れるアクション映画だ。

竜太郎はそうやって過ごしながら、とにかく気持ちのリフレッシュに努めた。



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