10円玉、消えた
三日目、竜太郎は借りていた残りの3枚のDVDを一気に観た。
ジャンルはサスペンス2つとアクションが1つ。
いずれもつまらなかった。

気がつくと時刻は夕方6時半。
このまま就寝時間まで家にいてもつまらないと思い、少し飲み歩いてみようと考えた。

まず馴染みの居酒屋『半兵衛』で夕食を兼ねて軽く引っ掛けた後、次は行き着けのスナック『奈央』へ。
両方ともゴールデンウィークの最中でも営業していたのは有り難かった。

竜太郎は『奈央』で、景気づけにカラオケを歌いまくる。
自慢のノドを聴かせて店の女のコたちから拍手喝采を浴び、酔いも回ってかなりいい気分になった。

ところが、途中から新入りのサオリという女のコがテーブルについて一変。
なんとサオリが若い頃の里美にそっくりだったのだ。
竜太郎の頭の中に、里美との思い出が鮮明に蘇る。

一気に気分が落ち込み、急に物静かになる竜太郎。
それを見てママが心配そうに声を掛ける。

竜太郎は必死にごまかした。
「飲み過ぎたかな。俺も弱くなったもんだ、ハハハ…」

直ちに帰宅した竜太郎だが、気持ちはブルーなまま。
更にその夜、夢の中に里美が現れ拍車をかけた。



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