10円玉、消えた
彼女を利用して里美のことを忘れようとするなんて、俺は最低だ。
そんなことをしたら、彼女の気持ちはどうなる?
ホントにバカなことをしようとしたもんだ。
彼女に言った通り、俺はどうかしてるんだ。
とにかく早く気持ちを切り替えねば…



結局竜太郎は、その日の夜も酒の力を借りることにした。
『半兵衛』に行き、店主とバカ話をして少し気が楽になった。

だが愚かにも、竜太郎はこの日も『奈央』へ行ってしまう。
しかもサオリを指名し、会話を弾ませ水割りをしこたま飲んだ。

やがてフラフラになって帰宅。
リビングの床に横たわり、そのまま眠りこけた。



翌朝、竜太郎は前日の自分の行動を後悔するも、夜になるとまた『奈央』を訪れた。
そしてまたも泥酔して帰宅。

このパターンをあと二日も続け、長期休暇はあっという間に半分を経過。
朝目覚める度に、竜太郎は後悔の念を強く抱くのであった。

里美を早く吹っ切ろうというのは見せかけの気持ちであり、やはり竜太郎は彼女に会いたくてたまらなかった。
だからこそ、気休めと知りつつも、連日サオリに会いに行ってしまったのだ。
竜太郎は、最早前進する気力を失いかけていたのである。



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