10円玉、消えた
休暇八日目、早朝に携帯が鳴り響く。
またもディスプレイ表示は“公衆電話”。
里美だと思い、これまでは無視していた竜太郎だが、この日は思わず出てしまった。
「里美か?」
すると、予想だにしていなかった声が耳に飛び込んできた。
「残念じゃな。わしじゃよ、竜太郎君」
竜太郎の思考は一瞬ストップする。
「覚えとらんか。ずいぶん昔じゃからのう」
「ま、まさか…さ、三間坂さん…?」
「おお、覚えておったか。そのまさかじゃよ。本当に久しぶりじゃのう」
信じられないことである。
竜太郎が31年前に初めて会ったとき、この老人は少なくとも70は越えていたはず。
であればいまは100歳以上だ。
なのに、そのときと何ら変わらぬ張りのある声。
電話のため姿は見えないが、おそらくそれも31年前と殆ど同じに違いない。
「何度か電話したんじゃが、やっと出てくれたのう」
「え、あれは三間坂さんだったんですか?」
「そうじゃ」
「すいません、いたずら電話かと思ったんで」
「まあ気にせんでよい」
「でもまさか生きてるとは…あ、すいません、こんな言い方」
「いやいや構わんよ。そう思うのが当たり前じゃ」
またもディスプレイ表示は“公衆電話”。
里美だと思い、これまでは無視していた竜太郎だが、この日は思わず出てしまった。
「里美か?」
すると、予想だにしていなかった声が耳に飛び込んできた。
「残念じゃな。わしじゃよ、竜太郎君」
竜太郎の思考は一瞬ストップする。
「覚えとらんか。ずいぶん昔じゃからのう」
「ま、まさか…さ、三間坂さん…?」
「おお、覚えておったか。そのまさかじゃよ。本当に久しぶりじゃのう」
信じられないことである。
竜太郎が31年前に初めて会ったとき、この老人は少なくとも70は越えていたはず。
であればいまは100歳以上だ。
なのに、そのときと何ら変わらぬ張りのある声。
電話のため姿は見えないが、おそらくそれも31年前と殆ど同じに違いない。
「何度か電話したんじゃが、やっと出てくれたのう」
「え、あれは三間坂さんだったんですか?」
「そうじゃ」
「すいません、いたずら電話かと思ったんで」
「まあ気にせんでよい」
「でもまさか生きてるとは…あ、すいません、こんな言い方」
「いやいや構わんよ。そう思うのが当たり前じゃ」