10円玉、消えた
別れ際にはいつも“達者でな”と言っていたのに、今回は“またな”である。
老人自身、近々再び会いに来ようとしているのだろう。
竜太郎にはその確信があった。



ではどうすればまた会える?
あの爺さんはおそらく人間を超えた何かだろう。
でもだからと言って、こっちの望み通りにすんなりと会いに来てくれるとは思えない。
漠然と来るのを待っていては時間の無駄だ。
何かいい方法はないものか…

そうだ、あの公園だ!
俺が爺さんに会ったのは二回ともあの公園だった。
そう、時刻はいずれも夕方の5~6時だ。

あ、そういえば親父も俺に聞いてきたっけ。
爺さんに会ったのはどこで何時頃だったかと。
俺から聞いた親父は、次の日からその時刻にあの公園で爺さんを待っていた。
何してるんだろうと、俺もその光景を陰からこっそり見てたっけ。

確か一週間くらいは親父はそうやって待っていたはずだ。
そしたら親父は爺さんとやっと会うことができた。

よし、あの公園に行ってみよう。
休暇はあと一週間あるんだ。
ただ飲み歩いてばかりいるよりはずっとマシだ。



竜太郎は早速何日か分の泊まりの用意をし、急いで東京駅へと向かった。



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