10円玉、消えた
「実はな、最初はそう考えてた。そもそもお前とラーメン屋やるために帰って来たんだからよ。でも久しぶりに家で一晩過ごしたら、そんな気なくなっちまってな」

「そうさ、もうずっと母さんのそばにいてあげなきゃ」

「お前が店やらなくても俺がこっちに居たって、まああの爺さんも大目に見てくれるだろ」

「当たり前さ、父さんは30年も一人で頑張ってきたんだから」

源太郎はニコッと微笑んだ。
父さんのこんな穏やかな笑顔は見たことないな、と竜太郎は思った。

「さてと…ぼちぼち寝るか」
源太郎は欠伸をしながら言う。

「お休み、父さん」


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