10円玉、消えた
「ん?なんじゃね?」

「やっぱ三間坂さんは、俺がどの道で成功するかもわかってるんですね」

「無論、わかっておる」

「それ、教えてくれませんか?」

すると老人はニコッと微笑んだ。
「君も10円玉を無くして知ることができなかった。でもそれも“占いの結果”じゃ。無理に知る必要はない」

「でも成功する道を選ばなかったら、父みたいになりそうで…。あんな風にはなりたくないんです」

「それは君自身がどう踏ん張れるかじゃ。竜太郎君、何事も自分のすることにしっかりと責任を持つんじゃ。悔やんだり人のせいにしたり、そんなことはせんようにな」

「さっき父は三間坂さんに文句を言ってたんですね」

「そうじゃ。“わかってるんならなぜ教えてくれなかったんだ”などと、20年以上も前のことをグチグチ言って、まあみっともなかったのう」



そうだよな、この爺さんの言う通りだ。
占いをやって10円玉を無くしてしまったのは自分が悪いんだもんな。
それを教えてくれなんて言うのはムシがよすぎる。
とにかく父さんと同じことをするのだけはゴメンだ。



やがて竜太郎はしっかりと返事をする。
「そうですね。わかりました」

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