10円玉、消えた
ある日竜太郎は『黒部サイクル』を突然訪れた。
このところ出前で来ることが激減したため、黒部孝夫に会うのは一週間ぶりだ。
黒部は相変わらず自転車をいじっている。
この日はブレーキの効き具合を確認しているようだ。
「悪いな、リュウちゃん。ここんとこ余り出前頼まなくてさ」
汗を掻きながら黒部が言う。
「そんなの気にしないでよ、タカさん。ウチの親が喧嘩しないから、タカさん腹減らないんだよね」
二人は声を出して笑う。
「ところでリュウちゃん、この頃はどうだい?まだ悩んでるのかい?」
「悩んでるって、前話した将来のこと?」
「そう、それそれ」
「もう殆ど悩んでないよ。目標が決まってるから」
「へぇ~スゴいな、もう決めたんだ。で、何を目指すんだい?」
「漫画家」
「なるほど、リュウちゃん絵が上手いもんな」
竜太郎は自分の描いた漫画を、何度か黒部に見せたことがある。
だが漫画に疎い黒部は、いつも“上手いね”としか言いようがなかった。
それでも、竜太郎の漫画家としての才能はかなりある、ということだけは充分わかる。
これならラーメン屋を継ごうか、漫画家を目指そうか悩むのも無理はない、と思った。
このところ出前で来ることが激減したため、黒部孝夫に会うのは一週間ぶりだ。
黒部は相変わらず自転車をいじっている。
この日はブレーキの効き具合を確認しているようだ。
「悪いな、リュウちゃん。ここんとこ余り出前頼まなくてさ」
汗を掻きながら黒部が言う。
「そんなの気にしないでよ、タカさん。ウチの親が喧嘩しないから、タカさん腹減らないんだよね」
二人は声を出して笑う。
「ところでリュウちゃん、この頃はどうだい?まだ悩んでるのかい?」
「悩んでるって、前話した将来のこと?」
「そう、それそれ」
「もう殆ど悩んでないよ。目標が決まってるから」
「へぇ~スゴいな、もう決めたんだ。で、何を目指すんだい?」
「漫画家」
「なるほど、リュウちゃん絵が上手いもんな」
竜太郎は自分の描いた漫画を、何度か黒部に見せたことがある。
だが漫画に疎い黒部は、いつも“上手いね”としか言いようがなかった。
それでも、竜太郎の漫画家としての才能はかなりある、ということだけは充分わかる。
これならラーメン屋を継ごうか、漫画家を目指そうか悩むのも無理はない、と思った。