10円玉、消えた
「一つの目標に向かって一生懸命やるってのはいいことだよ。リュウちゃん、いまも新作はバンバン描いてんのかい?」

「うん、描いてるよ。クラスでも評判なんだ」

「へぇ~。それじゃ女の子にもモテモテだな」

途端に竜太郎は顔を赤らめた。
「い、いや、そ、そんな…」

黒部はニコニコ顔で言う。
「おっと、図星みたいだな。ガールフレンドでもできたかい?」

「そ、そんなんじゃないよ。ただ俺の漫画をスゴく気に入ってくれてるコなんだ」

「じゃリュウちゃん、プロポーズでもしなよ」

「ダメに決まってるよ。向こうにはファンが多いんだから」

「そんなの関係ないさ。やってみなきゃわからんだろ」

「まあそうだけど…」

「口で言いにくいんだったらラブレター書くとかさ」

「そんなのどうやって書いたらいいかわからないよ。漫画を描くのとはワケが違うんだから」

そのとき黒部はポンと手を叩いた。
「お、いいこと思いついた。そのコのためだけの漫画を描いてやったらどうだい?」

「え?漫画を?」

「うん、みんなに読ませるのとは全然別のを描くんだ。で、渡すとき“君のためだけに描いたんだ”とか言ってさ。スゴい喜ぶと思うよ」


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