10円玉、消えた
「なんだリュウちゃん、いつの間にこんな可愛いガールフレンド作っちゃって。羨ましいよ、まったく」
汗まみれの黒部孝夫が大きな声で言った。
前日母親に、薫を連れて来ると約束してあった竜太郎は、この日家に行く前に『黒部サイクル』に寄ったのだ。
彼女ができた、と予め竜太郎に告げられていた黒部だが、突然の来訪にビックリした様子だ。
「薫、俺がガキんときからよく面倒見てもらってるタカさん。スゴくいい人なんだけど、まだ嫁さんもらえないんだよ」
「お、おいリュウちゃん、そんな余計なこと言うなって」
顔を真っ赤にした黒部に、竜太郎は声を出して笑う。
隣りの薫もクスクスと愛らしい笑顔を見せる。
からかわれながらも黒部は、竜太郎と薫が並んで立っている姿を見て、この二人結構しっくりしてるな、と感じていた。
恋愛ごとに疎い黒部でも、この二人の醸し出す“バランスの良さ”は察知できたようである。
「竜太郎はホントにタカさんって人を慕ってんだね」
『黒部サイクル』を出てすぐ、薫がそう言った。
「俺一人っ子だろ。兄弟がいないってのはやっぱり寂しくてさ。昔から何でもタカさんタカさんだった。俺にとっちゃ“兄さん”みたいな人さ」
汗まみれの黒部孝夫が大きな声で言った。
前日母親に、薫を連れて来ると約束してあった竜太郎は、この日家に行く前に『黒部サイクル』に寄ったのだ。
彼女ができた、と予め竜太郎に告げられていた黒部だが、突然の来訪にビックリした様子だ。
「薫、俺がガキんときからよく面倒見てもらってるタカさん。スゴくいい人なんだけど、まだ嫁さんもらえないんだよ」
「お、おいリュウちゃん、そんな余計なこと言うなって」
顔を真っ赤にした黒部に、竜太郎は声を出して笑う。
隣りの薫もクスクスと愛らしい笑顔を見せる。
からかわれながらも黒部は、竜太郎と薫が並んで立っている姿を見て、この二人結構しっくりしてるな、と感じていた。
恋愛ごとに疎い黒部でも、この二人の醸し出す“バランスの良さ”は察知できたようである。
「竜太郎はホントにタカさんって人を慕ってんだね」
『黒部サイクル』を出てすぐ、薫がそう言った。
「俺一人っ子だろ。兄弟がいないってのはやっぱり寂しくてさ。昔から何でもタカさんタカさんだった。俺にとっちゃ“兄さん”みたいな人さ」