一日だけの夏恋
彼女はふふっと、笑った。
そして海のほうを向いた。
僕も海を見た。
海にしずんでいく太陽って燃えるダイヤモンドみたいなんだな。
ふいに僕はそう思った。
彼女の方を見ると、彼女は俯いて顔から首にかけて暗い青色の影をつけっていた。
何故か僕は急に切なくなって、彼女を力いっぱい、
抱きしめてやりたくなった。
それは恋愛からくる気持ちというよりかは、
彼女今にも消えてなくなりそうな彼女を守りたいという
純粋な思いだった。
彼女は顔をあげ、僕を見た。
「この海ね、彼氏とよく来てたのよ。
と言っても元彼だけどね」
僕は黙って、彼女を見つめた。
波の音がやけにうるさかった。
「その頃はね、この幸せな時間が
続くと信じて疑わなかった・・・」
「なんで・・」
僕はなんで別れたのか、と続けようとしたが、
無粋なことだと気がついて口をつぐんだ。
そんな僕を見て彼女は可笑しそうに笑った。
「あら、変なところで気をつかうのね。
いいのに。
別れたのは、彼が浮気したから。
いいえ、元から二股かけられていたの。
彼によるとあっちが本命で私が浮気だったらしいわ。
結婚の約束までしていたのに。バカみたい」
彼女は海を見つめ、嘲笑した。
「すべて騙されていたの」