孤独な天使
その日は結局、何もすることができずに帰った。

せっかく忍び込むことができたのに、手がかりのひとつも見つけられない自分が空しい。

この調子なら、あっという間に卒業のときを迎えて、大学に自由に出入りすることすらできなくなる―――



「お父さん、ごめんね。」



帰り道、そうつぶやくと。

涙がせりあがってきた。

だけど、まだ諦めちゃだめだ。

私には、やらなきゃいけないことがあるんだから。



孤独な私は、小さな体を抱きしめながら階段を上る。

アパートは、私の仮の棲家。

この場所も、この大学も、すべて。


私は、いつか本当の居場所を手にすることができるのだろうか。

父の罪を晴らした、その後で―――
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