戦乙女と紅~東方同盟の章~
「俺は乙女の見張りを任されている。どういう事かわかるか」
兵士は手にした槍を構えた。
「獅子王直属の、優秀な兵だという事さ。そこらの一般兵とは違う、忠誠心も武術も獅子王に認められた、精鋭という事だ」
「……」
確かにな。
表向きには同盟を結んだという事になっている女神国の女王を幽閉しているのだ。
何も知らされていない一般兵が見張りの任務を任される訳がない。
「つまり貴様は、獅子王の非道を知っていながら加担しているという訳だな」
俺は静かに槍を構える。
「ならば気絶で済ませるなどと手心を加える必要はなかったか」
「その方がいい。甘く見ていると槍の錆になるのは貴様の方だ」
兵士も槍を構える。
奇しくも同じ得物。
純粋に力量の勝負となる。
…はじまりは突然だった。
どちらが先という事もなく、両者の槍の穂先が走る。
僅か一度の瞬きの間に数合。
槍の穂先は何度互いの頬をかすめて行った事だろう。
達人の域でなければ視認すらできぬ攻防の末、俺と兵士は一旦動きを止めた。
「成程。大した腕だが…槍が右頬を一度かすめているぞ?」
俺にかすり傷を与えた事が余程嬉しかったらしく、嬉々として語る兵士。
「そうか?」
俺は頬の血を拭う。
「貴様は右にも左にも三つずつかすり傷が残っているがな」
兵士は手にした槍を構えた。
「獅子王直属の、優秀な兵だという事さ。そこらの一般兵とは違う、忠誠心も武術も獅子王に認められた、精鋭という事だ」
「……」
確かにな。
表向きには同盟を結んだという事になっている女神国の女王を幽閉しているのだ。
何も知らされていない一般兵が見張りの任務を任される訳がない。
「つまり貴様は、獅子王の非道を知っていながら加担しているという訳だな」
俺は静かに槍を構える。
「ならば気絶で済ませるなどと手心を加える必要はなかったか」
「その方がいい。甘く見ていると槍の錆になるのは貴様の方だ」
兵士も槍を構える。
奇しくも同じ得物。
純粋に力量の勝負となる。
…はじまりは突然だった。
どちらが先という事もなく、両者の槍の穂先が走る。
僅か一度の瞬きの間に数合。
槍の穂先は何度互いの頬をかすめて行った事だろう。
達人の域でなければ視認すらできぬ攻防の末、俺と兵士は一旦動きを止めた。
「成程。大した腕だが…槍が右頬を一度かすめているぞ?」
俺にかすり傷を与えた事が余程嬉しかったらしく、嬉々として語る兵士。
「そうか?」
俺は頬の血を拭う。
「貴様は右にも左にも三つずつかすり傷が残っているがな」