戦乙女と紅~東方同盟の章~
…部屋を出た所で、違和感を覚える。
静か過ぎる。
小塔にはかなりの数の兵士が見張りとして立っていた筈だ。
なのに、誰一人としていなくなってしまっている。
最早身を隠して行動する必要がないほどに、小塔内は人の気配がなかった。
まるで乙女を連れて逃げてくれと言わんばかりだ。
…すぐに気づく。
獅子の国で何かあったのだ。
恐らくは厳重に幽閉している乙女さえも構っていられなくなるほどの重大な何かが。
…小塔の窓から、外の様子を窺う。
すっかり夜の帳に包まれた外の景色。
高い小塔からは、獅子の国をグルリと取り囲む地平線が見渡せる。
既に草原の草は枯れ果て、凍てついた大地が剥き出しになっている。
その剥き出しの大地を踏みしめ、獅子の国に近づく軍気があった。
…およそ五十万。
それが我が女神国を含む、五つの国の同盟軍だと気づくのに、さして時間はかからなかった。
静か過ぎる。
小塔にはかなりの数の兵士が見張りとして立っていた筈だ。
なのに、誰一人としていなくなってしまっている。
最早身を隠して行動する必要がないほどに、小塔内は人の気配がなかった。
まるで乙女を連れて逃げてくれと言わんばかりだ。
…すぐに気づく。
獅子の国で何かあったのだ。
恐らくは厳重に幽閉している乙女さえも構っていられなくなるほどの重大な何かが。
…小塔の窓から、外の様子を窺う。
すっかり夜の帳に包まれた外の景色。
高い小塔からは、獅子の国をグルリと取り囲む地平線が見渡せる。
既に草原の草は枯れ果て、凍てついた大地が剥き出しになっている。
その剥き出しの大地を踏みしめ、獅子の国に近づく軍気があった。
…およそ五十万。
それが我が女神国を含む、五つの国の同盟軍だと気づくのに、さして時間はかからなかった。