戦乙女と紅~東方同盟の章~
全くどいつもこいつも、乙女乙女と…。

俺は歯噛みする。

女神国の連中だけならいざ知らず、残り五つの国の者達まで、あの小娘の戯言にそそのかされたというのか。

どこまで単純な愚か者達なのだ…!!

「さぁ、答えてもらおう獅子王!乙女はどこだ!?」

「貴様…」

俺はその指揮官をギロリと睨む。

「たかが一兵卒の分際で、誰に物を言っている。俺は獅子の国の最高権力者だぞ。貴様ごときに口出しされる謂れはないわ。ましてや王たる俺の言葉を疑うなどと…」

俺は右手を振り上げる。

同時に。

「!!」

同盟軍がたじろく。

王宮の門から、武装した獅子の国の兵士達が出てきたのだ。

その数八十万。

我が軍の全兵力。

同盟軍の数を遥かに上回る。

「貴様ら黙らねばこの場で同盟は破棄、敵軍として始末する」

「おのれ、横暴な!!」

同盟軍の騎士達はついに腰の剣を抜いた。

「あくまで乙女の夢物語に殉じるか」

俺はニヤリと笑った。

「それもよかろう…戯言を抱いてこの場で果てろ」

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