戦乙女と紅~東方同盟の章~
その時だった。

私の隣に立っていた赤い外套の男。

無言のまま、私を見つめていただけの男が突然、その手にした魔槍を担ぎ上げた。

…その身に漂うのは、闘気。

寒気がするほどの闘気だった。

男…紅はその闘気をまとわせた魔槍を、渾身の力を以って投擲する!!

それこそ風のように速く。

何者をも黙らせるほどの凄みを放ちながら、魔槍は軍勢の中心に、まるで落雷の如く突き刺さる!!

…たった一本の槍だった。

この地で一、二を争う武の腕とはいえ、たった一人の男が投げた槍。

しかしその槍は、両軍合わせて百三十万もの兵士を、一瞬にして沈黙させた。








兵士達の憎悪をも断ち切る紅の風。

奇跡としか、言いようがなかった。









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