戦乙女と紅~東方同盟の章~
「貴様ら!!」

紅は吼える。

「戦乙女の言葉が聞けぬのか!!!!乙女が戦いをやめろと言っておるのだ!!何をおいても乙女の言葉を優先させろ!!戦乙女にまだ涙を流させる気か!!!!!」

激しく猛り狂う暴風のように。

紅は百三十万の兵士に向かって怒声を浴びせる。

…あれ程の怒号が飛び交っていた戦場が、水を打ったように静まり返っていた。

「…行け、乙女」

紅はいつもの冷静な表情に戻り、私に言う。

「…ありがとう、紅…恩に着る」

私は疲れきった体で、それでも兵達に近づいていった。

そして。

「!」

一番近くにいた、獅子王軍の兵の頬を打った。

驚いた顔をする獅子王軍の兵士。

その隣に立っていた女神兵の頬も打った。

その後ろの兵も。

その前の兵も。

一人ずつ。

誰一人分け隔てなく。

私は力の続く限り、一人一人、兵士の頬を打っていった。

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