戦乙女と紅~東方同盟の章~
ともあれ、この状況を乙女に知らせねばならない。

馬を走らせる事一日半。

俺はようやく、湖に囲まれた美しい国を眼下に臨む、小高い丘の上に立った。

「お疲れだったな、もうひと踏ん張りだ」

馬の首筋を軽く叩き、丘を駆け下りる。

…赤い外套は遠くからでも視認しやすい。

「おお!紅様!」

砦門の見張りに立っていた女神兵が、すぐに俺の姿を見つけた。

「長く離れてすまなかった。大事はないか?」

門の前で馬を止め、俺は馬上から兵士に問いかける。

「はい、変わりはありません。紅様こそご無事で何よりです」

そう言った兵は、一月前よりも筋肉質になったように思える。

鍛錬は欠かしていないようだ。

「さぁ、お疲れでしょう。お早く中へ。ゆっくりと旅の疲れを癒してください。それとも…」

兵士は意味ありげに笑う。

「乙女への報告の方が先ですか?一月も顔を合わせていなかったのです、早くお逢いになられては?」

「こいつめ」

ニヤリと笑って、俺は馬にまたがったまま門を潜る。

「今の発言は高くつくぞ。たっぷり鍛錬でしごいてやる」

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