別冊 当て馬ならし
「お前に狩られる為に、俺はいる」
どうして・・・?
どうしてこんなに、甘く響くの?
「セルヴァン・・・」
「お前がいなくなったら、
 俺はなんの為に努力したんだ?」
「だって・・」
「お前が王女だから、
 おれは最強になると決めたんだ」
「でも・・・」
「俺が王になれば、
 いつも一緒だ。
 ファルゴアの外にいっても身分差はない」
「あたし、でいいの・・・?」
「あぁ、ファルゴアの王女の
 ベルがいい」
セルヴァンはあたしを抱きしめながら、
優しく優しく
あたしの後ろ向きの種を摘んでいく。
「でも、ファルゴアのみんなは
 あたしでいいのかな・・・」
くすっと笑ってセルヴァンは
「お?いつものわけわからんのに
 なってきたぞ」っていった。
それでも彼の心が
あたしへの気持ちを
ずっと流し込んでくれるから、
存分に甘えて不安を刈ってもらう。
「だって、今国を捨てようとした
 ・・・民の事を見捨てたよ・・・」
「じゃ、そんな姫はどうして
 農繁期の手伝いに自分も出向くのか?」
意味が解らなくて小首をかしげる
「魔物討伐で徹夜した兵士に、
 暖かい食事を用意して
 同じように寝ないで城で待ってるのか?」
「それは、当たり前だから・・・」
「小さな頃から公務にに出かけて
 ・・・辛いことがあっても
 民の前では笑顔でいた」
「それは、セルヴァンや
 おねぇちゃんが泣かしてくれたから
 ・・・みんなの前では笑顔で 
 いれただけだよ・・・」

「当たり前って思ってる事が、
 俺たちにどれだけの力を
 与えてくれてるか知ってるか?」
あぁ・・・そうか・・・
当たり前って思ってたそこに・・・

愛が溢れてたのか・・・

それは、あたしが怖くて覗けなかった
セルヴァンの心のようで・・・
だからあたしは嬉しかった。
それに気づくことが出来て
・・・あたしも、ファルゴアを
・・・愛して愛されていたのか・・・
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