別冊 当て馬ならし
小さいのも悪くない・・・こうやって
城壁と花壇の間の隙間にはいって
こっそり泣けるから。

視界がおぼろげで・・・
目の前の白い城壁は、
もやもやとして、まるで雲みたい

でも、それが赤みがかっているから
もうすぐ日が暮れるんだろう。

こっそりこっそり・・・
そう思うから声は出さない。
押し殺して食いしばるから、
吸う時の音が妙に響いてしまう。

俯いて地面に指で線を引く
その引いた筋に涙が落ちる・・・
なんとなくそれを見て
悲しい気持ちを紛らわした。

今日も怖く厳しい
教育係りのルミナーテは
盛大に目を吊り上げて怒る。

「こんなことでこの国は治まりません」

【平和の心】
があたしの力になったのは、半年前。

覚えなきゃいけない事、
やらなきゃいけない事
沢山・・・沢山・・・
毎日、勉強・・・

同じ部屋で、同じ勉強をしている
同い年の姉が
その意思のしっかりした
赤い瞳であたしを見る。
『がんばれ・くじけるな・
 でもあまやかさない』
そんな気持ちがわかる。
それでもってあたしに頷いてくる。

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