別冊 当て馬ならし
「でも・・・辛いんだもん・・・」
またじわりと涙が浮かんだ

「お・・・おい・・・泣くなよぉ」
そう言いながらセルヴァンも
何故か涙目だ。
たぶん自分も辛かった事
思い出したんだと思う。

「ほら・・・
 もう夜になるから中入るぞ!」
そのうるうるを隠すように景気よく
セルヴァンは声を上げる
鍛冶屋で鍛えられたハリのある声は
心にちょっと元気をくれた。

確かに周りを見回すと
陽がすっかり傾いて、
向こうの空はもう
夜の色をし始めている
仕方ないって思って立ち上がった。

セルヴァンも花壇から飛び降りて
隙間からあたしが出てくるのを
待ってくれる

急いででなきゃっておもったら、
丁度花壇の角で
膝小僧をしこたまうった。
「いだぁ・・・・・」
しゃがみこんでさする・・・
せっかく引っ込んでいた涙が
じんわりとまた視界を歪ませる。


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