別冊 当て馬ならし
目の前には道を塞ぐように
倒れてきた巨木があった。
それは、
あたしの馬車とお父さんの馬車の間を
分ける様に倒れこんでいた。

横倒しになった巨木の幹の高さは
あたしの背丈ほどもあり、
兵たちは王側にいる兵士と
あたし側にいる兵士が
頭だけ見える状態で会話していた。

とにかく巨木をどかさないと
あたしの馬車が通れないという事になり
お父さんも出てきて
とりあえず総出で当たる事になったが、
セルヴァンだけはあたしの元に寄ってきた。

「あぶないから入ってろ」
小声であたしにだけ聞こえるように
優しく囁く

久々にかかった親しい口調に
ドキっとする。

でも・・・なんでかなぁ・・・
自分が・・・子供だから
こういう事でしか
虚勢を張れないんだな。

「私が危険でないと判断したんです。
 あなたに命令される
 覚えはありません」
そういって、
兵たちが集まってる方に歩き出す。
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