甘い唇は何を囁くか
何故、ともう一度問い返す勇気は残されていなくて、たまらず泣きそうになってしまう。

どうしてなの―。。。

その瞳には、暗い影がかかっている。

遼子は涙ぐみ、言った。

「私のこと・・・好きだって、言ったじゃない・・・。」

嘘だったの・・・?

誰にでも言っている言葉だって、そう思えばよかったの・・・?

シスカは、眉を寄せて首を振った。

「・・・違う、そうじゃない。」

「だったら、何?理由を教えてよ。」

こんなに熱くさせておいて、今更逃げてしまおうっていうの?

そんなのってない。

「シスカ・・・、あなたを愛してる。たった数回しか逢ってないのに、こんな事を言うのはおかしいってあなたは思ってるのかもしれないけど・・・本当なの。どうしようもないぐらいにあなたに惹かれてる。あなたを愛してる。あなたが・・・欲しい。」

こんなこと言ったことない。

でも、失いたくなくて、どうしても黙っていられなかった。

シスカは震える指先をかじるような真似をして、それから凍えたように肩を震わせて言った。

「お前を・・・死なせたくないんだ。」

「・・・。」

遼子は言葉を失って、怯えた眼差しのシスカを見つめた。

今、何て言った?

「・・・どういうこと・・・?」

それを確かめるために、問い返す。

シスカは俯くと、ぎりぎりとこぶしを握り締めた。
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