甘い唇は何を囁くか
もっと知りたい、遼子の言葉を信じて、全てを話すべきか…。

話していいのか…?

シスカは思案して遼子を見つめた。

もうひとつの魂。

この心を掴んで離さない愛しい女。

「離れないと、誓うか…?」

その瞳に恐れが宿り、シスカから離れて行くのではないかと、それだけが怖い。

遼子はシスカの腕を掴んだまま頷いた。

「うん。」

「何を聞いてもー?」

遼子は困り顔で微笑んで小指を出した。

「約束するわ!」

何をしようというのか分からずにキョトンとしていると、遼子はシスカの手を取り小指を絡めた。

「指切り、絶対に約束を守るって…ん、おまじないかな?」

あどけない笑顔に、シスカはさらに胸が締め付けられるのを感じていた。

バンジェスの言葉を思い出す。

ーー運命を見つけ、不老を失った。

それは、何故か?

もう、お前の中に答えはあるはずだ。

否、まだその答えは見えていない。

だが、これから遼子に全てを話せば…何か分かるだろうかーー。

シスカは遼子を抱き寄せて甘い香りの漂う髪に顔を埋めた。

「遼子…。」

囁くと抱き上げた。

見つめ合ったまま、シスカは遼子をベッドに運んだ。

「…俺が産まれた頃は、世界は今よりももっと混沌としていた。酒場には薄汚れた売春婦が何人もいたし、血なまぐさい刃傷沙汰はしょっちゅうだった。それに多くの者がうえていた。俺は貴族の家系に生まれついて金に困るような事は1度もなかったが、今よりももっと貧富の差は歴然としていた。」
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