甘い唇は何を囁くか
シスカが、全然私に興味を示した態度しないから、宗眞がはっぱをかけたのよ―なんて言えるわけがない。

ただ、顔が熱くなる。

「何で紅くなる。あいつが好きなのか?」

シスカは真顔で、遼子の顔を覗き込んだ。

ううん、少し眉間にしわが寄ってる。

「まさか!」

遼子は首を振って言った。

「全然好きなんかじゃないよ。私が好きなのはシスカだもの。」

「・・・そうか?」

「そうだってば、っていうかヤキモチ、だよね?」

シスカは視線を伏せるとふいと目を逸らした。

あれ、怒ったのかな・・・?

そう思ったけど、違うみたいだ。

その両手はしっかりと遼子の両手を包んだままだから。

「・・・照れてるの?」

もしかして、と思いながら言うと、シスカはちらりとこっちを見遣った。

照れてるんだ!

すごい、信じられない。

こんなにカッコいい人が、私にヤキモチを!

あまりの衝撃に、さっきまでの話がうやむやになりそうなことを思い出した。

「シスカ、それでね、さっきの話なんだけど。」

シスカは遼子のほうを見向くと、ああと答えた。

「つまり、シスカが食べた…えっと、エッチして血を飲んだ女の人は、みんな死んじゃうのね?」

熱を出して、記憶が錯乱して、口も利けなくなって死に至る。

だから、私を抱けないって言ったのね・・・。

それが、本当のことだって未だに・・・声に出しては言えないけど信じられない。

この目の前にいる美しい人が、吸血鬼だって・・・。
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