甘い唇は何を囁くか
銀の髪、宝石のような碧眼。

ただ、その造りの全てが人間離れしているのは事実だ。

「俺は、お前を死なせたくない。だから、お前を抱けない。」

遼子は、小さくうんと言って頷いた。

そりゃ、私だってえっちひとつで生き死にの選択を迫られるとは思ってもいなかったから―それでも良いの!とは言えない・・・。

ちょっと・・・まだ全部は信じられないけれど。

人間の世界(ちょっとファンタジックな言葉だな)にだって、エイズもあれば性病だってあるもの。

したいけどできない。

愛していても、ってところはそういうところでは同じなんじゃないだろうか。

「いいよ、別に、えっちが全てなわけじゃないしさ。シスカと一緒にいられればそれだけで幸せだもん。」

我ながら、自分の耳さえも疑うような台詞だ。

言いながら顔が赤くなるのが分かる。

けど、シスカはそれでは不服があるようで不満足げに言った。

「俺は足りない。一緒にいるだけじゃなく、四六時中口付けて、お前と繋がっていたい。お前の良いところを探して、悦ばしてやりたい。」

なんて言うから余計に顔がぐんと紅くなった。

今の私の顔色は間違いなく茹蛸のようになっているはず。

確かにそのテクニシャンさだったら、そう思うでしょうよ。

もう、忘れかけてたのにさっきまでのこと、思い出しちゃったじゃないのさ!

「お前は、俺の事を欲しくはないのか?」

それはそれは、捨てられそうになっている子犬みたいな目で見つめて言う。

遼子はううと唸って答えた。

「そんなわけないでしょ、私だって、ほ、ほ、ほ…欲しいよ!」

っていうかこんなことばっかり言わせないでよぉ!!

「どうすればいいのか・・・何か方法が分かればな・・・。」

「そうだね・・・。」

って、そんな真剣な顔して話す課題か?

遼子は真っ赤になって俯いた。

でも、そうか・・・。

シスカの言っていることが本当なら、もう何百年もひとりで生きてきたってことだよね。

誰も愛さず、誰のことも必要とせず。。。

それって、すっごく寂しいだろうな・・・。

遼子はシスカを見つめた。

「ん?なんだ?」

こんなに優しそうな目でこんなに愛してくれてる。

それでも、私は死ぬのは怖い。

正直言って・・・まだ死にたくはない。

でも、私は歳をとらないシスカと違っておばさんになっていくし、えっちをしないでずっと一緒にい続けるなんて、そんなの男女として至難な話のような気がする。

というよりも、こんな綺麗な人の傍で、私だけ歳をとっていくのは・・・ちょっと、ううん、だいぶんイヤだ。

何か、いい方法・・・。

それを探さないと、私たちに幸せな関係なんて築けないんだ。
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