甘い唇は何を囁くか
分からない、と言うとシスカは俯いた。

そうだ。。

確かに、この身を魔が者に変えたのは、悪しきヴァンパイア。

ならば、この俺が人間をヴァンパイアに変えることもできるはずだ。。

バンジェスの言った、あの台詞。

【人間を仲間に変えて、不老を失った】

ただ、身体を交えて血を吸うだけではダメだ。

それは分かっている。

ならば、どういうことだ…?

「私がヴァンパイア…になるってのは、あんまり考えられないけどー。ね、シスカと同じヴァンパイアの人ってほかにいるの?」

遼子は、しっかりとシスカの指に指を絡めている。

伝わる体温に愛しさを感じながら、シスカは頷いた。

「永く仲間とは逢ったこともなかったが、仲間はいた。」

「そうなんだ…。その人たちは何か知らなかったの?」

「どうだろうな、それは…。」

そこまで答えて言いよどんだ。

【答えはすでにー】

シスカは首を振り、続けた。

「…まだ、分からない。」

「そっか…。」

肩を落とした遼子をジッと見つめた。

愛しい女。

魂の片割れであると、強烈なまでの実感がある。

遼子のためなら、何でも出来る。

望むなら、瞬きしている間に人も殺めてやる。

何もいらない。

遼子以外は何も欲しくない。

永く、存在してきて、自分の価値など感じることは1度もなかったのだ。

今、遼子のためならー。

ピクリとシスカは肩を揺らした。
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