甘い唇は何を囁くか
遼子をベッドに寝かし、シスカは部屋を後にした。

滾る欲望を抑えながら、夜の街を歩いていく。

吹く風は冷たく、シスカを嬲る。

欲しいものは、あれだけだ。

それなのに、もう喉の渇きを感じていた。

こんな化け物に…遼子を変えたくはない。

だが、もし…遼子を仲間に変えて…遼子と同じ永遠を生きていけるならー?

愛しい女と、結ばれるなどという夢物語は見ることも許されないと思っていた。

嗚呼。。。

シスカは拳を握って目を瞑った。

それが、許されるならー。。

「あのぉ…」

突然かけられた声に、シスカは足を止めた。

振り向かずとも分かる、若い女の声だ。

香しい赤ワインのような薫り。

人間のー血…。。。

振り返らないシスカの前に2人の女が顔を見せた。

長い金髪とショートカットの黒髪の女だ。

若い女、薫り、血ー。

牙が疼く。

「どこに行くんですかぁ?」

シスカは2人の女の身体を見やった。

イイ肉付きだ。

美味そうな白い肌…。

一瞬、遼子の顔が頭に浮かんだ。

だがー、やめられない。

喉が渇き過ぎて、痛い。。

そうか、今日はまだ一度もーー。

シスカはゆっくりと口を開いた。

「命が惜しいならーやめておけ。今日は機嫌が良い。今ならー逃がしてやる。」

はぁ、と小さく息を漏らした。

遼子ー遼子…。

欲しいのは、お前だ。お前だけだー。。
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