甘い唇は何を囁くか
おぞましいーーーおぞましい、行為だ。

何百年と時を経てもなお、慣れない。

だが、同時に香る、これまで以上にない甘く、芳醇な香り…。

紅い目の男は、ゆっくりと首から、牙を抜いた。

鮮血が首筋を流れていく。

「おっと、もったいない。」

そう言って、べろりと首筋を舐めた。

「あ…ンっ」

「んー?気持ち良かった?」

女は、はあはあと息を漏らすと頷いた。

ありえないーー、だが、知っている。

「お前…。」

シスカが言葉を紡ぐより早く、男はにまりと笑いながら言う。

「あんたと一緒だよ。」

ヴァンパイアかーー。
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