甘い唇は何を囁くか
とめどなく溢れる「質問」を頑張って我慢することにした。

シスカが、あんまりにも苦しげに微笑むから―。

そっと、髪を撫でて優しく口づける。

甘い、唇。

もったいなくて目を開けて、その顔の造形を刻んだ。

本当に、ヴァンパイアなの・・・?

もう何百年も生きてるってことは、私の何歳年上なんだろう。

永遠に歳をとらないって、どんな感覚なんだろう。

私には、きっと分からないんだろうな・・・。

32年だって、本当にいろいろあって・・・ある程度の恋愛だってしてきた。

シスカは・・・。

シスカは、どんな人と恋愛してきたの・・・?

こんなに身体の芯から蕩けるようなキスができるって・・・。

いう、ことは・・・。

チュッ

唇を離して、シスカと見つめ合う。

幸福感がこみ上げてきて、それから身体が熱くなる。

もっと―して・・・なんて、思わず言葉にしてしまいそう。

シスカはくすっと微笑んで囁いた。

「そんな目で見られると、我慢できなくなる。」

カァァー

一気に顔に熱が集中するのが分かる。

「もうっ・・・。」

むくれてシスカを見つめ返した。

微笑んだ顔も、いじわるを言う顔も、泣いているシスカも全部好き。

この気持ちを今更なかったことになんか、できるわけがないー。

「さ、今夜はもう寝ろ。明日、また来るよ。」

「・・・うん。」

「おやすみ」

「おやすみなさい・・・」

シスカは、前髪をかき上げておでこを出させると、そこにも浅い口付けを落とした。
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