甘い唇は何を囁くか
化け物であっても―、幸せになってはいけないさだめなのだとしても―。

夢を見ることも許されないのか…。

こんなにも・・・

宗眞はじっとシスカが苦悩する姿を見遣って呟いた。

「情けねぇなぁ・・・。」

俺たちは誇り高きヴァンパイアという種族。

生まれ持ったものではなく、選ばれて獲たこの力、不老不死・・・。

人間たちが、年老いて死にさらばえても、俺たちは死なない。

未来も過去もこの身にはなく、永劫と呼べる時間を生きることを許されている。

それが、運命という名の「女」ひとりに、こうも脆く崩れさられるのか。

シスカなど、見ていても分かる。

きっと、人間であった頃から人々に傅かれる生き方をしていたのに違いない。

それが、あんな小娘ひとりの影響で、およそ何百年も刻んだ事などなかっただろう皺など眉間に寄せているのだ。

それが―


宗眞には、それが許せなかった。


だからこそ・・・


思い出した記憶の影を振り払うようにして、口を開いた。

「そんなにあいつが好きなわけ?」
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