甘い唇は何を囁くか
好きなわけ?

そう問いかけてきた宗眞の目は、どうにも例えようのない暗みを含んでいるように見えた。

だが、何故と問いかえすのも憚られ、シスカは小さく頷くだけで答えた。

「無論だ。」

「ふぅん・・・まぁ、それが運命だもんな。」

そう言い、煙草に火をつける。

大げさにふかしながら宗眞はため息のように白い煙を吐いて言った。

「女ひとりの為に不老じゃなくなっても・・・いいわけか。」

「そのようなことは問題ではない。」

そうだ、問題なのは遼子のこと。

俺を忘れ、そしてヴァンパイアとなり永劫生き続けることになる。

自分と同じ業を背負わせるのか・・・あの小さな体に・・・。

「・・・そうですか。」


人間の血などみな同じ。

どれをとっても、甘く果実のようで花の蜜のようで、甘く喉を潤し、空腹を、渇きを満たす。

そのために、女を抱き、女を噛む。

女を殺す。

どうでも良い。

人間だって、食う為に豚や牛を殺す。

それと同じ。

俺たちも生きる為にそうするだけだ。

女も至上の快感を光悦を得ることができるのだ。

人間同士のSEXでは到底えることのできない超越した快感を―。

・・・喰えば良いんだ―。

何も考えず―、何にも脅かされない。。。


宗眞は小さく嘲笑を浮かべた。

そして言った。

はっきりと、シスカの目を見て。
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