甘い唇は何を囁くか
シスカは呆然とし、そして宗眞を見つめ返した。

何を言ったのか理解できない。

首を振り、言った。

「もう一度言ってくれ。」

だから、宗眞は言って煙草を石の階段に押し付けた。

「俺があいつを喰ってやろうかって、言ったんだよ。」

その言葉を聞いても、言葉の意味を把握できなかった。

暫く唖然としたうえで、シスカは宗眞の首を掴んだ。

「何だと、もう一度言え。」

ギリギリと首を締め上げながら、目の奥に浮かぶ殺意を必死に堪えていた。

このままこの男を殺してしまえば俺は、俺という種族の真実をもっと深く掘り下げて知る事ができなくなる。

この男は情報源なのだ―殺しては・・・。

だが・・・

「お前が・・・遼子を喰う・・・だと・・・?」

ごほっ

喉を締め付けられても、死ぬわけではない。

首を引きちぎり、ばらばらにしても―

どうやっても・・・

シスカはゆっくりと手を離した。

げほげほと宗眞は息を荒げて言った。

「まぁ、・・・最後まで聞けよ。」

そして、にまりと笑みを浮かべた。
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