甘い唇は何を囁くか
運命の女を見つけたら、その女と身体を重ね、そして牙を立てる。

毒に冒された女が死ぬ前に、もう一度牙を、今度は女を仲間に変えるために牙を立てる。

そうすれば、その女ははれて仲間だ。

ただ、自分を仲間に変えた愛しい者のことは全て忘れてしまっている。

もう、愛し合った者を見つめる瞳ではない。

むしろ、憎しみ、憎悪、怒り・・・。

二度と、愛を語らうことなどできない。

「だけど、俺ならあいつを仲間に変えることができる。」

・・・

「何だと?」

「俺は、運命の女を仲間に変えなかった。だから、仲間に変えるための力だけは残っている。」

シスカは首を振って言った。

「意味が分からない。どういうことだ・・・?」

宗眞は立ち上がると、尻をぽんぽんと叩いて振り返った。

「ま、いいじゃんそんなことどうだって。どうする?俺が、あいつを喰えば、あいつはお前のことを忘れないで俺たちと同じ仲間になれる。おれは不老を失うけど、ま、俺なら爺さんになってもかっちょいいだろうし。」

語るつもりがないことはそれだけで分かった。

仲間に変えられる。

遼子と一緒に永劫の時を生きていける。

遼子とふたりなら・・・。

だが・・・。

宗眞はシスカを見下ろして微笑んだ。

「ま、仲間に変えるための一連の行動はとる必要があるってこと、お忘れなく。」

それはつまり・・・。

この男が・・・。

遼子と―。

遼子と身体を重ねると、いうことだ―。





< 127 / 280 >

この作品をシェア

pagetop