甘い唇は何を囁くか
宗眞といるのは、シスカだ。

その声を聞いて疑問は確信に変わった。

けど、どうしてシスカが宗眞と一緒にいるのだろうか・・・。

「俺が遼子を抱いてやるよ。」

・・・

え?

今、何て言ったの・・・。

「それが最善だろ?」

何・・・何を言ってるの?

宗眞は・・・今、何て言った?

抱いてって―、どうして・・・なんでそんな話になってるの?

ちょっと―、ちょっと待ってよ!

シスカ・・・?

「・・・少し、考えさせてくれ。」

どういうこと・・・?

じゃりっ

シスカと宗眞は、ほぼ同時に、その砂利を踏む足音に振り返った。

どんな存在であってもふたりを驚かせることはない。

だが、シスカは目を見開いてそして、言った。

「りょ、遼子!」

何故、ここに―。

まさか、俺を追って・・・?

シスカは立ち上がり、遼子に素早く歩み寄った。

指先が震える。

こんなにも―こんなにも愛しい。

「触らないで―。」

思わぬ拒絶に、シスカは身を強張らせた。

「どういうこと―?」

そう言って見上げた瞳には、はっきりと困惑の色が見えた。

シスカはかぶりを振って答えた。

「違うんだ―。これは・・・。」

宗眞は、平然と後ろ手など組んで口笛を吹くそぶりで嘲笑を浮かべている。

それを苛立って見遣り、遼子を見下ろした。

涙ぐんでいる。

シスカはうろたえて言った。

「りょ、遼子・・・。」

「今、何の話をしてたの?」
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