甘い唇は何を囁くか
シスカにはシスカの考えがある。

きっと、私のために、考えてくれている。

それは分かっているつもり。

けれど、そこでにまにましている意地悪そうな宗眞の顔が見えたら、どうしようもなく怒りがこみ上げてきた。

だって、そうじゃない?

何だって、宗眞なんかの言うとおりにしようとしちゃってるわけ?

何で、「少し考えさせてくれ」って答えが出てきてるわけ?

「私が、別の人とエッチしても良いんだ?」

そりゃ、シスカがはじめての人じゃないけど、だからって―。

ジワッと涙が目じりにこみ上げてくるのが分かる。

シスカは狼狽して言った。

「そんなわけがないだろう!」

「じゃあ、どうして?嘘つかないでよね。宗眞が言ったこと、私にも聞こえたんだから!」

「これには理由があるんだ。」

「理由?ふぅん、そっか理由ね。私が、他の誰かと・・・誰でもないか、そこにいる宗眞と、シスカとするよりも先にエッチしちゃう理由がね!」

「怒らないでくれ、遼子。」

カッカしている自分が恥ずかしくなるくらいシスカは困った顔で肩に触れてくる。

けど、だって―。

どうしてよ・・・。

「だ~いじょうぶだって、俺だってダテに200年あまりも生きてねぇんだから、普通の人間の奴よりもよっぽどあんたを感じさせてやれるよ。」

って、こんな感じの奴なのよ?

「宗眞は黙ってて!」

遼子はない牙を光らせて怒鳴った。

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