甘い唇は何を囁くか
はぁはぁと、腕の中で遼子が小さく息を荒げている。

可愛い―。

微笑んで抱きしめる。

遼子はぷぅと頬を膨らませて「もうっ」と囁いた。

「アツアツですねぇ。」

遼子を抱き上げたまま、そこにいる宗眞を見下ろした。

煙草などふかして足を組んでにまついている。

―遼子が、大事だ。

こんなに愛しいと思える者を知ってしまった今、他に必要なものなど何もない。

ヴァンパイアに―。

変えて、そして永劫の時を共に刻んで生きたい。

それができれば―。

それが、この手でできれば・・・。

「宗眞は、シスカと同じなの・・・?」

「え?」

腕の中で遼子が言う。

とっさに何が言いたいのか分からずその目を見つめ返した。

この柔らかい身体は魔力だ。

この瞳に見据えられただけで、この身体に触れているだけで、その全てを奪いたくなる―。

問いかけに答える前に邪な妄想が身体を支配していくのを感じる。

「シスカ?」

シスカはハッとなって目を瞬かせた。

獰猛な獣は、俺自身か・・・。

思わず嘲笑を浮かべて、言った。

「何だ?」

「うん、だから、宗眞もヴァンパイアなの?って。」

「あ、ああ。そうか、お前は知らなかったな。こいつも俺と同じだ。」
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