甘い唇は何を囁くか
老婆はそう言い置くと、カーテンの向こうに姿を隠した。
「・・・それを言いに、わざわざ来たのか。」
影のままで、女はええと答えた。
「・・・お前、俺の運命か。」
遼子の前に・・・俺が愛した女。
俺を仲間に変えて、自分の不老を失った女―。
「・・・二度と、逢いたくなかったわ。」
やはりそうか・・・。
シスカはベッドに腰掛けて女の影を見つめた。
「悪かったな・・・。」
女はくすくすと小さな笑いを漏らした。
「よして、あなたらしくもない。」
「・・・名は?」
「・・・。」
「何だ、名前も名乗らないつもりか。」
「・・・。」
俺はあの頃から何も変わっていない。
声も、姿も、何もかも。
だが、あの頃から数百年経て、女はあの頃の美しさを全て・・・失ったのだ。
否、老婆になっても品の良い美しさは残っている。
「お前は、綺麗だよ。」
シスカはため息をついて言った。
「・・・嘘。」
「俺は断じて嘘は言わない。知ってるだろう。」
「・・・。」
女は何も言わない。
言わないかわりに涙の音が聞こえてきた。
泣いているのか・・・。
ギシリ
スプリングを鳴らして立ち上がると、老婆がいるカーテンの方へとゆっくりと歩み寄る。
「・・・それを言いに、わざわざ来たのか。」
影のままで、女はええと答えた。
「・・・お前、俺の運命か。」
遼子の前に・・・俺が愛した女。
俺を仲間に変えて、自分の不老を失った女―。
「・・・二度と、逢いたくなかったわ。」
やはりそうか・・・。
シスカはベッドに腰掛けて女の影を見つめた。
「悪かったな・・・。」
女はくすくすと小さな笑いを漏らした。
「よして、あなたらしくもない。」
「・・・名は?」
「・・・。」
「何だ、名前も名乗らないつもりか。」
「・・・。」
俺はあの頃から何も変わっていない。
声も、姿も、何もかも。
だが、あの頃から数百年経て、女はあの頃の美しさを全て・・・失ったのだ。
否、老婆になっても品の良い美しさは残っている。
「お前は、綺麗だよ。」
シスカはため息をついて言った。
「・・・嘘。」
「俺は断じて嘘は言わない。知ってるだろう。」
「・・・。」
女は何も言わない。
言わないかわりに涙の音が聞こえてきた。
泣いているのか・・・。
ギシリ
スプリングを鳴らして立ち上がると、老婆がいるカーテンの方へとゆっくりと歩み寄る。