甘い唇は何を囁くか
第14章 「毒」
遼子が来た。

その姿を見て、思わず笑ってしまった。

「お前、何しっかり着込んでんだよ。」

ベッドルームに入ってきた遼子は、もう泣いていない。

頭の中で整理できたのか、それともできていないけれど覚悟を決めたのか。

なんにせよ、限界を超えてるくせに気張ってる姿は、悪くない。

「来いよ。」

宗眞は、にまりと笑って囁くように言った。

部屋に入ってきたっきり、その場で硬直している遼子は、暗がりでも青褪めている。

「何だよ、また泣いちゃう?」

なんて、意地悪言うつもりはないんだが、ついつい。。

「うるっさいわね、今、行くわよ。」

焦ってんじゃないわよ、って遼子は強がった口調で言う。

いいね

悪くない

俺もしっかり準備できてきてる。

そろそろお食事の時間だしな。

ベッドサイドで立ち止まると、遼子は俺を見つめて震えた息を吐いた。

「何、緊張してんの?」

「・・・。」

何も言わずに小さく唾を飲み込んで、ふるふると首を振った。

「何だよ、何可愛くなっちゃってんの。」

「・・・しゅ、宗眞に可愛いとか言われたくない。」

お~お~

強がってますねぇ

「上がれよ。」

にまにまが止まらない俺を睨みつけて、遼子はベッドに膝を下ろした。

それを見て、俺はぐいっと遼子の腕を引いた。

くるりと身体が反転してそのままベッドの上に横たわる。

遼子は呆然、として俺を見上げている。
< 172 / 280 >

この作品をシェア

pagetop