甘い唇は何を囁くか
茶色い屋根に白い家。

それから、見たこともないほど美しい綺麗な海。

思ったよりも寒すぎるのにはびっくりしたけど、それはそれで新しいコートも買えるわけだしと納得して、ホテルはパンフレットで見てたよりも最高に良かった。

巨大な貝殻で出来たみたいなホワイトベージュの3階建てのホテルは、というよりもまるで小さな宮殿という風情。

これは、カップルで着たら、そりゃ女の子は参っちゃうよね。

と、考えてイラとかしてみたり。

いやいや、そんな小さな気持ちもすぐに萎えてしまう、この世界観。

本当に、妖精とか人魚とか御伽噺の世界を信じてしまいそうになる。

ヨーロッパと大きなくくりで言っても、それは神戸って小さな町とは比べ物にならないほど大きな国であって、大きな都市であって、パンフレットを見てもいまいちここがどこだかピンと来ない。

まぁ、どこでも良いといえば良いわけなんだけど。

なんて考えつつ、大きな地図をベッドの上に広げて、遼子はこのホテルに入る前に買ったスナック菓子の袋を開いた。

外国語で書かれているパッケージもこの彩り鮮やかで何の味なのか分からなさそうなイラストも日本には絶対に売っていないだろうと思えて、たまらなく購買意欲を誘われてしまった。

味も、本当「外国」って感じである。

さてと…。

ここはヨーロッパの南の方にあるシチリアって国だ。

国っていうか島?

淡路島とかそういう感じ?

ああ、32歳にもなって貧困すぎる乏しい知識。

遼子は一人でよかったと心から思った。

町歩きして、海を見に行って、それから歴史的建造物の写真をいっぱい撮ろう。

美味しいものもたくさんありそうだし。

もう、ワクワクが止まらない。

あ…ひと夏、いやひと冬のアバンチュールとかもあり…?
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